BtoBはBtoCのようにはいかない、その最大の理由
「AmazonのようにすればBtoBも変わる」と言われて久しいのに、そうならないのはなぜか。買い手が組織であることの意味を、意思決定の構造から考えます。
BtoBのEC化が語られるとき、必ず出てくるのが「Amazonのように」という言葉です。私も黎明期からこの言葉を何百回と聞いてきました。そして、そのままいった例をほとんど見ていません。
買っているのは「人」ではなく「組織」
BtoCでは、欲しいと思った人が、自分のお金で、自分のために買います。意思決定者と支払者と使用者が同一人物です。
BtoBは違います。現場が必要だと言い、購買部が価格を叩き、経理が支払い、使うのは別の部署。一つの購買に複数の人格が関与し、それぞれ評価基準が異なる。これがBtoBの購買の正体です。
「便利」だけでは組織は動かない
個人は便利なら乗り換えます。組織はそうはいきません。
「そのサイトで買うと、うちの稟議はどう通るの?」
この一言で止まる商談を、私は何度も見てきました。既存の発注フロー、予算科目、検収の手順、監査対応——組織の購買は業務プロセスに埋め込まれており、購買だけを取り出して便利にしても、前後のプロセスと接続できなければ使われません。
単価より「失敗しないこと」が優先される
BtoCの買い物の失敗は返品で済みます。BtoBの調達の失敗は、生産ラインの停止や納期遅延として跳ね返り、担当者の責任問題になります。
だからBtoBの買い手は、安さより確実に届くこと、間違いなく同じものが来ること、困ったときに人が出てくることを買っています。価格比較サイトの論理が通用しにくいのは、買い手が非合理だからではなく、リスクの重みが違うからです。
移植ではなく、再設計
BtoCの成功体験をそのまま移植しようとしたBtoB ECは、たいてい「きれいだが使われないカタログサイト」になりました。うまくいった例は例外なく、買い手組織の発注業務そのものを観察し、稟議・与信・検収まで含めて再設計しています。
BtoBはBtoCの遅れた姿ではありません。別の原理で動く、別の生き物です。そこから始めると、見える景色が変わります。